2018.11.02

地域食材生産者インタビュー/有限会社NORMA 高橋睦さん

地域の食文化を

生ハムで発信したい

 


有限会社NORMA代表取締役、高橋睦さん

 

食文化の多様さに

魅せられ、飲食の道へ

 

大学卒業後、旅行会社で働いていた時に添乗の仕事でイタリアを訪れ、地域によって食文化が全く違うこと、それぞれがきちんと根付いていることに感動しました。ビールも各店で作っていたり、その土地、その店の味がありました。そして、地域の伝統料理などを案内するとどのお客様も喜ぶことに気づき、食文化は多くの人にとって興味のある分野だと実感しました。

そんな食文化の奥深さに惹かれ、藤沢市内で飲食業を始めました。飲食店として特徴を出すために、古代ローマ時代から作られていたという発酵食品、魚醤と生ハムを作ることにし、研究を始めました。魚醤はイタリアで昔から塩の代わりに使われていたと言いますし、生ハムも日本のぬか漬けや味噌のように、各家庭で作っていたものです。食材の保存性を高め、より美味しくする発酵食品は、日本でも歴史があり、馴染みがあります。

神奈川県の中でも藤沢市は最も養豚業が盛ん。この土地で育てられた豚肉を使った生ハムづくりを目指しました。この地でしかできない、味わえないものを作りたいという思いを形にしたのです。2009年から生ハム作りを始め、2015年4月から販売を開始しました。

 


藤沢の気候と風土が育む「長期熟成ふじさわ生豚(生ハム)」。

 

材料は肉と塩のみ

藤沢の風土が味を作る

 

こちらの生ハムには藤沢産の厳選された豚もも肉と天然塩だけを使い、長期間熟成させます。食品添加物などは一切使わず、土着の菌がその地域の味を作ってくれます。仕込みは冬。藤沢市の契約農家からと畜したての豚を入手し、豚舎を改装した工房で48時間以内に塩漬けにします。塩は冷蔵庫代わりの保存のためのもので、主役は菌と豚肉です。この主役を生かすのが映画監督の役割を担う私の役目。窓のない工房内で15,6ヶ月~2年ほどゆっくりと乾燥、熟成させます。この乾燥・熟成工程において、表面にカビができます。このカビが肉の表面からの腐食を防ぎ、肉のタンパク質を分解。旨み成分であるアミノ酸へと変化します。長期間の熟成においてはこのカビなどの菌が大切な役割をします。そして、この菌はその土地ごとに異なるので、味わいも変わってくるのです。藤沢市の養豚農家が集積する地域に工房があるので、豚と同じ環境、気候風土の中、熟成ができます。

出来上がった生ハムは、噛むほどに出てくる旨みと独特の香りがあります。

 


工房内で生ハムを乾燥、熟成させる。

 


藤沢市内をはじめとした飲食店で味わうことができる。

 

地域の食文化を

作りあげたい

 

当初は生産の体制を作ることに苦労しました。初めの年に2本作り2本ともうまくいったのですが、次の年には16本作ったうちの半分くらい失敗しました。生ハムノートを作り、データを残すようにしたところ大きめの肉が失敗していたことがわかり、塩漬けの時間を変えるという対策ができました。個体差があるものなので、出来上がりの差ができないように気をつけています。

日本での生ハム文化は始まったばかり。まだまだ試行錯誤の状態で、自分で自分の商品のクレームを言うくらいの厳しさをもち、常に上を目指して作っています。世界で一番うまい生ハムを作りたいですね。

食文化は地域性が表れるもので、地域によって違っていい。どこでも同じものを食べるのではなく、地域の食文化を取り戻したいと考えています。それぞれ地域のものが生まれ、お国自慢ができるようになるきっかけになる。そんな商品にしたいです。天候や気温の変化があるので、生ハムの味わいが毎年変わるのも楽しいです。そのまま切って食べるのはもちろん、パスタのソースに入れても美味しい。生ハムの切れ端と生クリームとか。骨の周りのハムはオリーブオイルにつけておくと、おつまみにぴったりです。

 

 

有限会社NORMA

神奈川県藤沢市打戻3288-1

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