2019.06.27
明和町の特産品であるホームランスターメロンが今年も旬を迎えている。
3年前からメロンづくりに精を出すのが、30代の若き生産者・濱口仁志さん。
メロンの出来を確認しながら「まだまだ勉強の身です」と白い歯をのぞかせる
地域の名産品を守る若きメロン生産者
南勢バイパスから海側へ車で数分。大淀地区にある濱口仁志さんのビ ニールハウスを訪ねた。畑では手のひらほどの大きな葉が生い茂り、球状のホームランスターメロンが顔をのぞ かせる。その姿は、出荷を今か今かと待ち望んでいるようだ。黄みがかった乳白色で、網目のないつるんとしたフォルムが特徴。独特な強い甘みが、長年に渡って地域住民に愛されてきた。市場に出回るのは、4月末から6月末。「地元の方は本当にホームランスターメロンが好きでね。皆さん、ケースで買っていかれますよ」と、濱口さんは微笑む。 栽培が明和町大淀で始まったのは、昭和62年。県内唯一の生産地として、一時は30人以上の生産者がいたもの の、近年は高齢化を理由に数を減らす。「廃業を考えていた生産者さんから、『やらへんか』と声をかけても らった。生産者の高齢化が進む中、『僕じゃなかったら誰がするんや』と飛び込みました」と、濱口さんは3年前にメロンづくりに参入した。
水はけのよい砂地が美味しさの秘密
生産が盛んな理由は、大淀地区特有の土壌にある。海岸から近く、水はけの良い砂地が栽培に適する。 「保水性が低い土壌であるため、メロンは水を求めて根をぐんぐん広げます。土壌の栄養を吸収しながら、実を大きくしていくのです」と濱口さん。強い甘みは、水を求めて根を広げたメロンの「頑張りの証」であるという。 メロンづくりの1年は、冬にスタート。寒さが厳しい1月下旬に植え付けが始まる。ハウスには暖房設備が ない。ハウスを覆うビニールだけでは寒さをしのげないため、土壌をさらにビニールで被覆し、保温機能を高 める。「太陽からの熱を逃がさないよう、苗の上に何枚も重ねてトンネルをつくります。日照量は時間に よって異なりますから、ビニールを取り外したり被せたりと、冬場は畑から目が離せません」。 桜の開花に先がけて、受粉作業に着手。株から枝が二手に分かれ、複数の実をつける。最良のメロンを選び、残りを摘果。受粉後約45日で、出荷を迎える。「収穫期が近くなると水をほとんど与えません。甘さを凝縮させるためです」。ヘタについた葉が枯れたら収穫の合図。今年は4000個の出荷を見込んでいる。 実や葉の大きさにバラつきがあるのは、温度や入射量によるものだという。奥行約60mのビニールハウスは、 入り口から奥へ進むほどに緩やかに高い。わずかな高低差だが、成長に影響を及ぼす。「苦労は絶えないが、 愛情をかけた分だけ応えてくれるんですよね」と、メロンに優しいまなざしを向ける濱口さん。「天候や気温 などの気象条件は毎年異なりますから、常に1年生という思いで作業にあたっています」。
濱口さんが代表を務める「iBroom」では、イタリアンバジルを中心に、さまざまな野菜を育てる。バジ ルの若葉をモチーフとしたロゴは、初心者マークをイメージ。「初心を忘れない」という思いが表わ れている。「一緒に働く仲間を求めています!」と濱口さん